
二人のための結婚準備応援 For Wedding.
ご結婚を間近に控えたお二人とご家族の皆さまのために。
鮮やかな文様に秘められた、打ち掛けの魅力
この上なく縁起のいいことを表す「吉祥」という言葉
きものには、千以上におよぶ吉祥文様が用いられます。
あまり聞き慣れない「吉祥」という言葉ですが、どういった意味があるかをご存じでしょうか。 「吉祥」は「きっしょう」と呼び、最上級の福を意味する言葉なのです。 おみくじなどでいうところの、「大吉」の上が「吉祥」。大吉に大がつくような、この上なく縁起がいいことを表しています。
着ているだけで“福が来る” 「吉祥文様」
ちなみに文様という言葉も、現代ではなかなか耳にしない言葉ですよね。
これは「模様」の原型とも言われていて、大きく分けると、「文様(紋様)」が線や波などの柄であれば、「模様」は、その柄の配置の度合いを意味します。
白無垢や色打掛などに「吉祥文様」が多く描かれているのは、着ているだけで運気を呼び、縁を繋いでいくなどの福を寄せる願いや想いが込められているからです。
昔の日本の結婚式は、「嫁ぐ」という意味合いが大きかったことから、ご新婦側の親御さまの「幸せになってほしい」という想いが着物に込められていたことがうかがえます。
伝統的な吉祥文様① 鶴(つる)
「鶴」は、夫婦(つがい)になると、一生涯を添い遂げることから、「夫婦の絆」を表す文様として、婚礼衣装の代表格になっています。
鶴以外の鳥では、鴛鴦(おしどり)も一生を仲良く連れ添うことで有名です。
伝統的な吉祥文様② 松竹梅(しょうちくばい)
色打掛(HT413)/クチュールメゾン ヒサコタカヤマ 銀座本店
日本人が大事にする価値観を表す言葉のひとつに「節操」「しのぶ」があります。夫婦で未来を歩んでいく中には、思いも寄らないことが起こりますが、その難を乗り越えるからこそ強くなるという行動を示す言葉です。
その価値観を植物にたとえて、文様にしたのが「松」「竹」「梅」。
「松」は、一年を通して青々と生い茂る様がクローズアップされがちですが、雨風を避ける防風林としても知られ、地面にしっかりと根を張った松は、嵐にも負けない力強さがあります。青く美しい中には、そういった強さも秘めているいったことの象徴なのです。
「竹」もまた、青々とまっすぐと伸び、大雪をもしのぶ力強さの象徴です。
「竹に上下、節あり」という言葉もあるように、節がしっかりとしていることで曲がることはあっても折れることはそうありません。結婚式などの人生には節目があることによって成長し、夫婦の絆が強くなっていく、と考えられています。
「梅」は、寒い冬を越えて花を咲かす、忍びを表す花です。梅が咲いて、やがて桃が咲き、桜が満開になる。そんな日本の四季の美しさと心の情景を梅の文様から感じ取ることができます。
伝統的な吉祥文様③ 牡丹(ぼたん)
色打掛(HT416)/クチュールメゾン ヒサコタカヤマ 銀座本店
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という女性の美しさを表すことわざがありますが、牡丹は、ふっくらと咲く牡丹は、花の中でも女王のような存在感を放っています。
縁起を担いだほかの吉祥文様とは少し違って、美しさそのものを文様のひとつとして愛されています。
伝統的な吉祥文様④ 丸文(まるもん)
天陽寿閣/クチュールメゾン ヒサコタカヤマ 銀座本店
初めと終わりのつなぎめのない、真ん丸とした文様には、「両家の和」「縁」への想いが強く込められています。
丸の中に美しさを表す牡丹などの花が描かれていたり、鶴で円を描いたり、文様のアレンジが多様なのも特徴的です。
伝統的な吉祥文様⑤ 貝桶(かいおけ)
色打掛(GI123)/クチュールメゾン ヒサコタカヤマ 銀座本店
「結婚式に貝?」と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、貝は、平安時代の宮中遊びから広まったもので、それぞれに美しい貝を持ち寄って、その貝にちなんだ和歌を作って競い合いました。貝が高貴なもの、雅なものとして扱われたのには、そういった歴史があるそうです。
中でもハマグリは、一対のふたがぴったりと合わさることから、夫婦和合の象徴として知られ、「貝合わせ」という儀式は、挙式にも用いられました。
貝は嫁入り道具の最も大切なものとして立派な貝桶に入れて持参した、というのが由来となっています。
今回ご紹介した文様の意味や想いは、ほんの一部にすぎませんが、こういった文様からも、ご新郎のもとへと嫁ぐご新婦さまの親御さまの想いや幸せを願う気持ち、そして自然への感謝の気持ちが伝わってくるようです。
婚礼衣装は、日本の美意識の結集ともいえる、いわば芸術作品。花嫁さまだけが得ることのできるその特権をぜひ楽しんでくださいね。
(取材・写真協力)
クチュールメゾン ヒサコタカヤマ 銀座本店