THE INTERVIEW
No.7
2020秋号
“物”が蘇る瞬間は最高。
一日があっという間なんです。
ホテル椿山荘東京 施設管理課
板橋 佳子さん
もともとは文具メーカーで一般事務をしていましたが、やりがいが感じられる仕事に就きたいと転職を決意。求人雑誌で出会ったのが、家具の修復師という仕事でした。「まったくの初心者だったので、入社後はいちから修業。家具や陶器、大理石の壁の修復など、さまざまな技術を学びました」
転職した5年後にその技術が認められ、得意先として通っていたホテル椿山荘東京に入社することになったそう。以来、約20年に渡って、ホテル内の家具や備品、壁、床などの修復を担っています。「破損部分を特殊なパテで修復し、大理石や木目、陶器の色に合わせて着色していくのが基本的な流れ。綺麗に仕上がったときの、達成感がたまりません。うまくいかずにへこむときもありますが、そんなときは以前にうまく修復できた家具などを見に行き、気分を奮い立たせています」
作り手に敬意を払うことも、とても重要。「材料費も人手もかけて、いちから作ることはとても大変。少し欠けたり割れたりしただけで、簡単にゴミにしたくないと思っています。依頼されたものが修復されて、『わあ、こんなに綺麗になったんだ!』と喜ばれることも大きなやりがいに。当ホテルの家具や調度は、1992年の創業以来使われているものばかり。訪れるお客様が『また来たい』と思えるような、上質な空間を保つ一員でありたいと思っています」
Written by Haruna Hagiwara